内定辞退、若手行職員の早期離職防止に向けたNIE教育のススメ

NIE内定者新入行職員向け 2020.10.05

“思考力”“表現力”向上とともに企業理解を促進

 AIやフィンテックなどデジタル化の進展や異業種参入などから金融機関を志望する学生は減少傾向にあり、採用活動は深刻化しています。採用エントリーの減少に加え、2020年は新型コロナウイルス感染症対策で、従来の対面による面接を慣れないオンライン面接に切り替えるなど、これまでにない苦労を強いられました。採用活動がひと段落し、ほっと胸を撫でおろしたいところですが、これから内定式を経て、来年4月の入社式までの間、近年問題となっている“内定辞退”を出さないように内定者への継続的なケアが必要です。一方、入社から数年を経過した若手行職員の早期離職も問題化しています。これを防ぐために、金融機関は、メンター制度など新制度の導入やキャリアデザイン研修などさまざまな手立てが求められています。これらの問題を解決する一つの手段としてNIE教育が有効と考えられます。

 

1.内定辞退は、企業理解度の低さやスキルへの不安が要因

 リクルート就職みらい研究所が2020年4月に就職活動を行った学生を対象に行った調査では、内定や内々定を辞退した経験のある割合は、20年3月時点で66.9%に上ったと結果を公表しています。実に、大学生100人のうち、約67人が複数の企業から内定をもらい、1社を選択する過程で、他社の内定を辞退しているということになります。

そもそも内定を辞退する要因は、

①入社に対する不安

②会社の将来像

③自身のスキルに対する不安

などが挙げられます。金融界でも「同業他社に乗り換えた」「公務員試験に合格した」そして「先輩から仕事がキツイと聞きマイナスイメージを抱いた」などの理由で辞退するケースが多いと言われます。

 内定辞退を防止するために、採用担当者は常にコミュニケーションを図り、内定者のさまざまな不安を解消する必要があります。入社に対する不安を解消するためには、内定者が持つイメージと現実とのギャップを極限まで無くすことではないでしょうか。ギャップを解消するためには、①企業への理解度アップ②同僚や先輩との懇親会③必要なスキルを身に着ける―など、各種施策を実施しているようです。企業への理解度アップでは、施設見学会やインターン・アルバイトを取り入れているところもあるようです。また、同僚や先輩との懇親会では、SNSを活用した交流などを展開。必要なスキルを身に着けるために、通信教育による入社前研修は、多くの企業が取り入れています。

2.若手行職員の早期離職は企業の理解向上やキャリアデザイン

 内定辞退とともに喫緊の課題となっているのが、入社数年以内の若手行職員の離職です。山口県の某地域銀行が3年前から転職先の調査を実施したところ、県や市など地公体への転職が4割と最も多く、次いで取引先企業だそうです。離職の原因として挙げられるのが、入社前後の理想と現実のギャップや、顧客本位の営業と求められる目標との乖離など。ある識者は、「古い世代は、若手のうち下積みで苦労したら、あとで大きな仕事ができるという説得もできたが、今のミレニアム世代の若者には、こうした考え方は全く響かない」と指摘します。早期離職を防ぐために、所属長や人事部などの担当者が面談で悩みの解消に奔走したり、メンターやブラザー・シスターなど制度の導入、そしてキャリアデザイン研修などで若手行職員が抱える悩みや不安解消に努めています。若手行職員に対し、必要なことは、内定辞退者と同様に金融業界で働くやりがいや自身が働いている金融機関の社会的な立ち位置を理解することではないでしょうか。

3.理解度やスキルの向上に有効なNIE

 内定辞退や若手行職員の早期離職を防ぐ一つの手段としてNIE(Newspaper in Education)が有効と考えられます。NIEは、世界80カ国で小中学生を対象に取り入れられている教育で新聞を教材としています。日本では、1985年に日本新聞協会が導入しました。最大の効果は、“読解力”の向上とされていますが“思考力”や“表現力”の向上にも効果があるといわれます。学校の教師がNIEアドバイザーとして教育を実施しますが、アドバイザーからは「社会人にも必要な教育だ」との声が聞かれます。

ここで、新入行職員研修を実施する金融機関の研修担当者の悩みをみると

など、悩みは尽きません。ここにNIEで培われた読解力、思考力、表現力が伴えば、これらの悩みは軽減されるのではないでしょうか。実際に、多くの金融機関では、大手紙や地方紙をはじめとした新聞の購読を推奨しています。

また、研修担当者の間からは、行職員の早期離職に関して「他の企業が魅力的に映ることに対して、説得力ある説明ができない」との声が聞かれます。

4.金融総合専門紙を活用したNIE

 金融業界に就職を予定する内定者に対しては、金融総合専門紙を活用したNIE教育を実施することで、読解力、思考力、表現力に加え、金融業界の知識、金融の現場での活動状況、そして金融で働く諸先輩の意見をもとに業界そして内定している金融機関への理解のほか、必要なスキルを認識することが可能です。

ちなみにニッキンでは金融機関の行職員向けNIEコンテンツをご提供しています。

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