言葉の影響力

コミュニケーションハラスメント 2022.05.23

 

 金融機関の仕事の中で、コミュニケーション能力は、欠かせない能力の1つだと思いますが、「言葉」は「言葉」を超えた影響力を持っています。

 少し前に吉野家の元常務の「言葉」が悪い意味で話題になり、彼はその「言葉」で常務を解雇されることになってしまいました。彼はマーケティングのプロで、吉野家を上昇気流に乗せた立役者でもありました。マーケティングには「熱い思い」と「冷たい客観性が」が必要で、問題に辿り着くための、論理的思考が必要です。しかし、冷たいだけでは人はついてこず、熱いだけでは道を間違いこともあるため、そのバランス力がとても重要です。この思考をもって吉野家の売り上げを伸ばしたことは素晴らしいことですが、商品に対する愛情が、彼の言葉からは感じられませんでした。

 部下を指導する時も「言葉より感情」が重要で、リーダーの言葉が厳しく聞こえたとしても相手の気持ちを理解し、どうすべきかを共感の気持ちを持って伝えれば、部下の脳はそれを感じとります。これは、脳科学でよくいわれるミラーニューロンの影響で、脳は嘘を見抜くのです。つまり、言葉にしていない感情が脳には伝わってしまうのです。

心理学者のロバート・E・アルベルティ―博士の言葉を借りれば「何を言ったか」よりも「どう言ったか」のほうが影響力は強く、ポジティブなメッセージには言葉よりも動作や表情、感情といった非言語的な要素のほうが影響する。

人は「何を言われたかは忘れるが、何を感じたかは覚えている」と。

冒頭の常務の「言葉」は、言葉としても衝撃でしたが、言われた側の感情を不快にした可能性はあります。もし本当に、お客様を大切に思い、商品を大切に思っていたとしたら、どのようなメッセージになったのでしょうか。

 組織のヒエラルキーの中では、当然上司の言葉の威力のほうが部下の言葉よりも上回ります。だからこそ上司やリーダーの方々の言葉は、チームの生産性や、チームのモチベーションにも大きく影響します。また、お客様に対するコミュニケーションであっても「言葉よりも感情が」伝わります。お客様のための提案がどうか、お客様の脳は嘘をみぬきます。短期的にはごまかせても、お客様本位の提案でなければ長期的には信頼を失うこととなります。

今、金融機関は「変化」ではなく「変容」を求められています。

そのためには多様性を受容し、1人1人のポテンシャルを高め、創造する力が必要です。当然、持続可能な経営、組織運営、組織そのもののあり方も問われる時代です。だからこそ「人間性」を磨き、その土台となる「心」を磨き、嘘のない言葉で、嘘のない行動で、1つずつ「信頼」を積みあげていくことが大切です。皆さんの専門性を是非、良い影響力に変えて、そして言葉と行動の影響力をポジティブに変えながら、さなぎから、蝶へ「変容」するように、皆様の組織に変化をもたらせてはいかがでしょうか。そのためには、まずご自身が「自分を知り」そして、真っ先に「自分を変化」させ、「変容」へのチャレンジをしていただきたいと思います。

株式会社シー・マインド 宮道京子